2025/09/24開催 デービッド・アトキンソンが再び語る「新・観光立国論」
報告者:株式会社小西美術工藝社 代表取締役社長 デービッド・アトキンソン
2015年に出版された書籍「新・観光立国論」では、急速な人口減少に向かう日本は、これからは観光産業で豊かになれる、として元アナリストらしい数値分析を踏まえた議論が展開されていました。
それから10年後の日本は、書かれていた通りインバウンドが増加して、年間収支は自動車に次ぐ第二の産業として10兆円に迫っています。本人曰く、これは予想が当たったのではなく、そうなるように、継続的に政府に働きかけてきた結果だとのことです。
残念ながら愛知・名古屋は「インバウンド一人負け」と言われ、まだ本格的な観光経済の恩恵は受けていません。それを跳ね返して「愛知・名古屋を活性化しよう!」ということが、今回の講演の依頼テーマです。
愛知・名古屋は自動車産業のおかげで潤ってきたので、自治体が観光産業に本気で取り組んでこなかったことが一番の原因で、実際に政府の観光関係施策も愛知名古屋ではあまり生かされていません。観光を産業として活性化するには、歴史や文化の価値を訴えることよりも、観光客が魅力を感じる施設や仕掛けを作ることが先に必要です。
名古屋城本丸御殿には虎の絵が描かれています。その説明として書かれている英語の説明は「Tiger」と書かれていました。トラであることは外国人でも見ればわかります。なぜトラの絵なのか、その理由や物語に興味があるのに、その説明は英語で書かれていません。これでは外国人は興味の持ちようがありません。
これからは外国人の目線でもう一度英語の説明書きを見直して、外国人が興味を持つような説明を書くように働きかけてください。かつて京都の二条城にある大広間を見たとき、その部屋の英語の説明は「Big room」と書いてありました。大広間であることは見ればわかります。しかし、その大広間は徳川家康が征夷大将軍を受けた儀式を行った場所です。そして徳川慶喜が大政奉還を行った場所でもあります。つまり、江戸時代の始まりと終わりを象徴する極めて意味のある部屋なのです。このような説明を英語で丁寧に入れたことで、二条城はインバウンドが集まる場所になりました。
愛知・名古屋でもこのような基本に戻った施設の整備を進めれば、ここは大都市としての魅力がある場所なので、大きな観光経済の成果が生まれると思います。